徐々に変わりつつある日本の社内外との通信手段であるが、いまだにメールを使用している会社は多い。ビジネスマンがメールに添える挨拶文だが、なんと年間約2.7日も挨拶文の作成に時間を浪費している ことが分かった。
そもそもメールに挨拶文は本当に必用なのだろうか。そんな単純な疑問から日本のビジネスマナーについて考察していきたい。
挨拶文は社内・外問わず使われることも
メールに添える挨拶文は社内のみ対象と思われがちだが、下記にあるような挨拶文のテンプレートは社内でも使用されているケースが多い。
例えば筆者は日本生命という企業で勤務していたが社員数が数万を超えるため一つ一つの部署がもはや別会社であるかのような感覚であった。
そのため社内だろうが上司・部下関係なく部署名・役職名・氏名を付記することが暗黙のルールとなっていた。驚くことに氏名の最後には〇〇殿という敬称まで 付けていた。
しかしメールの下部に送信元の情報を自動挿入する設定があるのでいちいち上記のような情報を記載する必要はない。
もしこうした無意味な挨拶文を毎日作り続けるとどうなるのだろうか。気になって試算してみた。
挨拶文作成にかける時間は年間2.7日
メールの挨拶文とは具体的に下記のようなものだ。
〇〇株式会社 △△事業部
鈴木〇〇様
いつもお世話になっております。
株式会社〇〇営業部の田中太朗です。
この典型的なビジネスメールの挨拶文だが文字数は48文字である。1文字あたりのタイピングに約0.7秒かかるため挨拶文をゼロ作成するためには約70秒 もかかる。
単語登録機能を使用すれば「あ」と入力するだけでこのテンプレートを挿入できるが、それでもなお社名・部署名・宛名などの箇所は手作業が発生する。
では下記の条件を満たす社員がいた場合、どの程度挨拶文の作成に時間を浪費しているかを試算してみた。
- 年間勤務日数245日
- 1日で送付するメールは12通(※注1)
- タイピング速度は1文字あたり0.7秒(注2)
結論として年間約2.7日もの時間を挨拶文の作成に使用していることが発覚した。 筆者はこの数字を見たときに、氷山の一角でしかないと感じた。
実際に「了解」で済むようなメールを「お世話になっております。表記の件につき了解しました。引き続きよろしくお願いいたします」のように記載することが多いからだ。
実際にメールがビジネスマンから奪う時間は恐ろしいほどに多いと容易に推測することができる。
もしこの挨拶文の習慣を全社員が行い続けた場合、恐ろしいほどの人件費がドブに捨てられているということになる。
試算にあたって参考としたデータは下記の通りである。
そもそもメールを使うメリットはあるのか
そもそも社内外の連絡手段としてメールを使うメリットはあるのだろうか。簡単に思いつくのは下記くらいである。
- メジャーであり誰でも使える
- 過去のメールを検索する機能を保存、管理できる
最も大きなメリットは基本的には誰でも使えるということ だろう。いちいちメールの使い方を新入社員研修でやるところは少ないはずだ。なぜならほとんどの人はメールを使用したことがあるし、もし分からないとしても「ググれ」の一言で完結するからだ。
さらに言えば企業間同士でどの企業もメールは使っているという共通認識が形成されている ため「御社はSlack、Chatwork、Skypeのどのツールをご利用ですか?」といったやり取りすら発生しない。
またメールは一通ずつデータを分け保存・管理できることもメリットだろう。Slackではデータをエクスポートする機能は搭載されているものの、メールのように特定のやり取りだけを切り取ってデータを素早く見つけるには向かない。
例えばプロジェクトAの中に細かい業務Bがあったとしよう。Slackでは複数のチャンネルでプロジェクトを管理するため、プロジェクトAとプロジェクトBへのヨコの切り替えが容易にできる。しかしプロジェクトAの中の業務Bというタテの切り口では、Slackの板という概念上分が悪い。
このようにメールは効率面で考えると分が悪いと言われがちだが、細分化された業務を細かく管理するには向いているのかもしれない。
メールを使うなら挨拶文は必要という固定観念
さて、メールを使用するメリットがいくらかあることは分かった。しかしメールを使用する場合「挨拶文は必ず入れないとダメ」という意味の分からない固定観念に縛られることになる。
年間2.7日もの時間を挨拶文に浪費するくらいなら、LINEやSlackといったチャットサービスを使う方が圧倒的に時間効率は良いのではないだろうか。
もし企業の規模感の問題でSlackを導入できない、またはそれ以外の理由で導入が難しいのであれば「メールの挨拶文は禁止」くらいの社内文化を醸成していくことが必用不可欠だ。